Jクラブの経営状況(2010年度)#1[営業利益編]

Jリーグのサイトで、昨年度のJリーグの各クラブの経営状況の資料が公開されましたので、この資料を考察してみます。
一気に書く時間が取れないという理由で、2~3回くらいに分けてアップします。
考察はJ1の18クラブだけになります。

第1回の今回は、営業収入についてです。

儲かってるかどうかとか、予算と順位との相関とか、おもしろそうなところは、支出と合わせて考えないといけないので、そのあたりは費用について考察する次回か次々回に行います。
今回は、クラブの収入源は何で、やっぱ不況だなぁ、というところでお茶をにごしたいと思います。

Jリーグ公式サイト:ニュースリリース:2010年度Jクラブ経営情報開示

注意事項

用語の説明については、なるべく難しくならないよう感覚的にわかりやすくしていますので、厳密的には正しくない説明になっているところがあるかもしれません。
考察については、ほとんどが裏を取らずに数字からの憶測で書いています。
結局、細かいところは内部関係者でない限りわかり得ませんので、割り切って書いています。
クラブによって決算時期が異なります。

J1クラブの営業収入(2010年度)

金額の単位は百万円です。
3桁目が億です。たとえば150で1億5000万円、3000で30億円です。

クラブ 営業収入 (広告料収入) (入場料収入) (Jリーグ配分金) (その他)
仙台 2,041 611 790 233 407
山形 1,229 228 349 232 420
鹿島 4,466 1,561 747 480 1,678
浦和 5,625 2,256 2,249 279 841
大宮 3,308 2,286 375 220 427
F東京 3,671 1,372 779 284 1,236
川崎F 3,540 1,856 603 298 783
横浜FM 3,565 1,414 932 251 968
湘南 1,288 430 360 209 289
新潟 2,216 843 770 224 379
清水 3,486 1,274 744 304 1,164
磐田 3,151 1,793 408 339 611
名古屋 4,103 1,998 880 468 757
京都 2,311 1,484 348 220 259
G大阪 3,346 1,734 553 375 684
C大阪 2,554 1,282 428 290 554
神戸 2,035 710 401 210 714
広島 2,605 1,231 560 295 519

項目説明

営業収入

営業収入とは、本業で得た利益のことです。
サッカークラブの本業は、サッカーに関わる事業のことになります。
逆に本業以外の収入は、大きなものでは資産の売却益でしょうか。

新潟や鹿島などはサッカー以外の事業もJリーグ百年構想の一環として行っていますので、その分の営業収入も含まれていると思われます
(おそらく、サッカーに比べればわずかだと思います)

スポンサー収入

営業収入の内訳のひとつです。
主にユニフォームスポンサー、看板スポンサー、試合の冠スポンサーです。
冠スポンサーとは試合のときに「***Day」や「***Presents」とかやっているやつです。

スタジアムのネーミングライツのほとんどは、所有者である自治体と命名権スポンサーの間の契約です。
神戸のホームズスタジムは所有者は神戸市でスタジアム運営もクラブではないですが、スタジアムのネーミングライツはクラブと命名権スポンサー間の契約になっていて、クラブが広告費を得ています。
これは珍しいケースではないかと思われます。

入場料収入

入場料収入は、公式戦の試合のチケットとシーズンシートの売り上げです。
出資企業やスポンサー企業が買い上げている金額も含みます。

Jリーグ配分金

Jリーグからの配分金のことです。
もっと言うと、Jリーグからもらった金額です。

複雑な計算があるらしいですが、おおざっぱな内訳はこんな感じと思われます。
リーグ戦(J1:1~7位、J2:1~3位)、ナビスコカップ(ベスト4以上)、天皇杯(ベスト4以上)、ACL、CWCの賞金。
Jリーグオフィシャルスポンサー料、放送権料、商品化権料の一律分配する分(J1とJ2の差はある)。
公式試合出場料、人気で色を付けた分。
制裁金や反則ポイントの罰金があればその分を減額。

その他の営業収入

営業収入での上記以外の収入です。
主にユニフォーム契約金、グッズ販売、移籍金、ファンクラブ収入(後援会・賛助会員等)、スクール会費です。
自治体からの出資金は営業外収入で、この項目には入らないはずです。

考察

前年度比

2010年度と2009年度の各項目の増減比です。
計算式は、(2010年度-2009年度)÷2009年度×100 (%)です。
▲はマイナスを表しています。

昇格組の仙台、湘南、セレッソ大阪は、その他の項目以外で大きくプラスになっています。

クラブ 営業収入 (広告料収入) (入場料収入) (Jリーグ配分金) (その他)
仙台 33.5% 43.1% 46.0% 64.1% ▲2.9%
山形 5.7% 17.5% 2.9% ▲7.9% 11.1%
鹿島 1.3% ▲5.7% ▲3.5% ▲5.3% 14.0%
浦和 ▲12.5% ▲17.5% ▲8.6% ▲17.0% ▲6.6%
大宮 ▲6.9% ▲4.6% ▲1.1% 0.0% ▲23.5%
F東京 36.8% 1.1% ▲5.9% ▲24.3% 2.7%
川崎F 23.8% 1.5% ▲3.7% ▲24.2% 3.6%
横浜FM ▲5.3% 7.0% 10.2% ▲4.6% ▲9.9%
湘南 20.8% 15.6% 88.5% 99.0% ▲27.4%
新潟 ▲8.4% ▲1.2% ▲6.3% ▲2.2% ▲26.3%
清水 ▲0.8% 3.9% 11.9% 1.7% ▲12.1%
磐田 ▲7.9% ▲7.7% ▲20.2% 50.7% ▲17.8%
名古屋 ▲8.9% ▲3.4% 14.1% 86.5% ▲46.5%
京都 ▲4.3% ▲2.0% ▲16.9% ▲3.1% 1.6%
G大阪 ▲17.9% 0.2% ▲6.0% 15.4% ▲50.7%
C大阪 14.0% 2.4% 54.0% 137.7% ▲5.9%
神戸 ▲16.8% ▲0.7% ▲4.8% ▲7.9% ▲34.0%
広島 ▲4.5% ▲9.8% 2.8% 5.4% ▲3.7%

広告料収入

広告料収入は、NTTの大宮、三菱自動車の浦和、トヨタの名古屋、富士通の川崎、パナソニックのガンバ大阪が上位になっています。
広告料収入の比率が50%を越えているクラブは、大宮(NTT)が69.1%、京都(京セラ)が64.2%、磐田(ヤマハ)が56.9%、川崎(富士通)52.4%、ガンバ大阪(パナソニック等)が51.8%、セレッソ大阪(ヤンマー、日本ハム等)が50.2%。
大宮の純利益は毎年0に近く、NTTとの損失補填に近い契約が推測されます。

大きな企業がクラブ(運営会社)に出資をしていない仙台、山形、湘南、新潟、神戸の広告収入は少なく、収入に対する広告費の割合も小さくなっています。
このようなクラブは予算が少ないために、毎年、降格の当落線上の戦いを強いらてしまいます。

仙台、湘南の昇格2クラブは昇格効果で広告収入が増えています。
同じく昇格組のセレッソ大阪の広告費が大きく増えていません。
仙台・湘南は出資比率のうち自治体が半分近く占めていて、セレッソ大阪はヤンマーと日本ハムが出資している点が異なります。
仙台と湘南はJ1昇格を契機に街ぐるみで盛り上がったり、既存のスポンサーが広告費を増やしたりしたと推測されます。
セレッソ大阪は広告費がJ1/J2に関係なく毎年一定しています。
2009年度にJ2に降格した柏と千葉もJ2になっても広告費は大きく落ちていません。
カテゴリーに関係なく広告費を得られるのは、出資企業依存型の特徴と言えるのでしょう。

入場料収入 その1

入場料収入は、浦和がダントツに多いですが、昨年比マイナス2億1200万円、前年度比でマイナス8.6%と深刻な状況です。
同様に大きく落ち込んでいるのは磐田で、昨年比マイナス1億300万円、前年度比でマイナスで20.2%。

仙台、湘南、セレッソ大阪の昇格3クラブがJ1効果によって大きく伸びています。
特に仙台の7億9000万円は、他のクラブと比較しても上位の立派な数字となっています。
J1効果だけとは考えられず、招待券をばらまかずにチケットを買って観戦する文化を築けているのではないでしょうか。

優勝した名古屋も14.1%と伸びており、リーグ戦の成績が入場者数に繋がっています。
客は勝っているとスタジアムに来ます。

逆にリーグ戦の成績の悪かった、FC東京(降格)と京都(降格)と神戸(ぎりぎり残留)の入場料収入が減っています。
勝てないとチケット収入に大きく影響することが分かります。
浦和のチケット収入の減少も同じことが言えます。

他には、新潟とガンバ大阪の落ち込みが気になるところです。

入場料収入 その2

入場料収入にリーグ戦の観客動員を並べてみました。

  平均観客動員(リーグ戦のみ)   入場料収入
  2010年 2009年 差異 前年度比   2010年 2009年 差異 前年度比
仙台 17,332 12,951 4,381 33.8%   790 541 249 46.0%
山形 11,710 12,056 ▲346 ▲2.9%   349 339 10 2.9%
鹿島 20,966 21,617 ▲651 ▲3.0%   747 774 ▲27 ▲3.5%
浦和 39,941 44,210 ▲4,269 ▲9.7%   2249 2,461 ▲212 ▲8.6%
大宮 11,064 13,707 ▲2,643 ▲19.3%   375 379 ▲4 ▲1.1%
F東京 25,112 25,884 ▲772 ▲3.0%   779 828 ▲49 ▲5.9%
川崎 18,562 18,847 ▲285 ▲1.5%   603 626 ▲23 ▲3.7%
横浜 25,684 22,057 3,627 16.4%   932 846 86 10.2%
湘南 11,095 7,273 3,822 52.6%   360 191 169 88.5%
新潟 30,542 33,446 ▲2,904 ▲8.7%   770 822 ▲52 ▲6.3%
清水 18,001 17,935 66 0.4%   744 665 79 11.9%
磐田 12,137 13,523 ▲1,386 ▲10.2%   408 511 ▲103 ▲20.2%
名古屋 19,979 15,928 4,051 25.4%   880 771 109 14.1%
京都 10,510 11,126 ▲616 ▲5.5%   348 419 ▲71 ▲16.9%
G大阪 16,654 17,712 ▲1,058 ▲6.0%   553 588 ▲35 ▲6.0%
C大阪 15,026 9,912 5,114 51.6%   428 278 150 54.0%
神戸 12,824 13,068 ▲244 ▲1.9%   401 421 ▲20 ▲4.8%
広島 14,562 15,723 ▲1,161 ▲7.4%   560 545 15 2.8%

だいたい入場者数と入場者収入の昨年比は近い数字になっている傾向です。
昇格組を除くと、気になるところは、清水、広島、大宮、磐田です。

広島は入場者が大きく減っているのに、入場料収入が増えています。
清水は入場者が微増で、入場料収入が大きく増えています。
どちらも入場者の増減の割に入場料収入が増えています。
チケットの招待券を減らしたりしたのでしょうか?

磐田は、入場料収入が落ち込みが大きいことは上で書きましたが、入場者が減っていることが大きく影響しているようです。

大宮は入場者数が大きく落ち込んでいるのに対して、入場料収入はわずかに400万円しか減っていません。
例年より親会社がチケットを買い上げたのにも関わらず、来なかった人が多かったのかもしれません。

チケット料金を2段階価格制にした神戸

脱線しますが、チケット価格でユニークなのが神戸。
2010年シーズンからチケットを2段階価格制にしました。
具体的には、広島、ガンバ大阪、浦和、鹿島との試合のチケットを各座種1000円増しにしました。
(2011年度は、浦和、ガンバ大阪、セレッソ大阪の3試合)(子供は500円増し)
たとえば、通常バックスタンド自由席とゴール裏のチケット価格が2000円に対し、これらの試合では3000円です。

2010年のA価格の4試合 (括弧は2009年)
広島   :9,133人 (13,394人 ※ユニバ)、増減▲4261人(昨年比▲31.8%)
ガンバ大阪:16,887人 (20,721人)、増減▲3834人(昨年比▲18.5%)
浦和    :12,799人 (19,094人)、増減▲6295人(昨年比▲33.0%)
鹿島    :11,462人 (17,432人)、増減▲5970人(昨年比▲34.2%)

シーズンの平均入場者数はわずかに244人の減に対して、この4試合の平均入場者数は5090人減と大きく落ちています。
しかし、入場者数の昨年比は30%程度の減で済んでいます。
大半を占めるバックスタンド自由席とゴール裏のチケット代が50%増しなので、単純計算で入場者収入が増えていることになります。

収入面では成功したと言えるのでしょうか。
サポーター、特に対象のアウェイ客にはとても評判が悪いのですが。

Jリーグ分配金

Jリーグ分配金には賞金が含まれます。
賞金を除いてみると、だいたいリーグ戦の成績になるそうですが、上下差は1億円もないようです。
賞金を除いた分は、一律分配される分が大半を占めているのではないかと思います。

J1クラブでは賞金を除いて2~3億円です。
J2クラブの分配金は1億円前後で、水戸は営業収入の約3分の1がJリーグからの分配金となっています。
分配金はクラブ間の格差が大きくないので収入基盤の小さいクラブほどありがたい収入です。

今季(2011年)シーズンでスカパー・NHK・TBSとの放映権契約が終了します。
スカパーが撤退することはないでしょうが大幅な減額が噂されています。
TBSは撤退するとの噂もあります(代わりにテレビ東京?)。
放映権料の大幅な減額となると収入基盤の小さいクラブほど痛手となります。
そろそろ来年以降の放映権契約の話しが出てもいいはずですが、どうなるでしょうか?

その他の営業収入

上の項目説明で書いている通り、その他にはいろいろな収入が含まれています。
内訳がわからないので、考察が難しいです。

その他の収入の内訳で大きいのが移籍金です。
移籍金以外は毎年大きく増減するようなものではないので、移籍金の有無で、昨年度比が大きくなりやすそうです。
落ち込みが大きいのは、名古屋、ガンバ大阪、神戸。
神戸の2009年度は大久保嘉人とレアンドロの移籍金収入が合わせて4億円超あったと思われるので、2010年度は3億6800万円の減となっています。
ガンバ大阪は7億400万円の減、名古屋は6億5900万円の減。
(前年度に大きな移籍があったっけ?)

今年度は、内田篤人(鹿島→ドイツ)、長友佑都(FC東京→イタリア)の1億円以上の移籍金が鹿島とFC東京に発生しています。
清水の決算は1月なので、鹿島に移籍した本田拓也の移籍金が清水の収入に含まれているかもしれません。
セレッソは香川真司の移籍金はありませんでしたが、移籍先から約4000万円ほどの育成費を得ています。

移籍金を除くと、グッズ販売やファンクラブ会費の収入が多くを占めるようになるので、単純にサポーターの数が多いクラブの金額が多くなる傾向です。
ただ、サポーターの数が下から数えて4つめか5つめあたりの神戸の金額が多かったりします。
スクールが16校あるのでスクール会費が他よりも多いのかもしれません。

鹿島は2010年度からスカパー中継の制作を行うようになったためか、この項目が大きく増えています。

全体的に

昇格組を除く、J1クラブ全体の増減と昨年度比です。

  営業収入 (広告料収入) (入場料収入) (Jリーグ配分金) (その他)
増減 ▲1732 ▲863 ▲297 76 ▲2162
前年度比 ▲3.4% ▲3.8% ▲2.7% 1.7% ▲15.9%

広告料収入と入場料収入が減っているのは、不景気の影響が大きいと思います。
人気選手の海外流失など景気だけの問題じゃないのかもしれませんが、それは今年度(2011年度)の方が大きくなっているのではないかと思います。

「その他」の項目が全体で21億円も減っています。
グッズ収入やスクール会費が含まれているので景気の影響はあるでしょう。
しかし、移籍金ルールの変更によって、大きな移籍金がなくなったこともあるのではないでしょうか?

収入によるクラブの分類

仙台は入場料収入型のビジネスモデルのクラブと言えそうです。
広告収入と入場料収入が同じくらの新潟と浦和も入場料収入型と言ってもいいかもしれません。

広告収入の依存度が高い大宮、京都、磐田、川崎、名古屋、ガンバ大阪、セレッソ大阪、広島は企業依存型。
鹿島はその他の金額が多いので副業型。
横浜FM、FC東京、清水は広告収入も入場料収入もそこそこあるバランス型。

山形、湘南、神戸については、特徴がわからないクラブになっています。
(取り柄がない型?)

さいごに

Jリーグのサポーターは、クラブの収支や経営状況を気にしている人が多いです。
しかし、サイトやサポーターとのカンファレンス等で収支状況を公表しているクラブはわずかだと思います。
クラブ・フロントに対する評価の材料であり、サポーターからの評価を真摯に受ける姿勢を見せる意味でも、クラブ個別で公表する流れになってほしいです。

次回は、営業費用についてです。
アップは9月上旬くらいの予定です。
結局のところ、お金を使えばチームは強くなるのか、というところも見てみたいと思います。

(終わり)

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